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ガラスの豆知識

ガラスの歴史

諸説ありますが、ガラスが誕生したのは古代エジプトで今からおよそ5000年前だといわれております。メソポタミア遺跡から発掘されたガラス玉が世界最古のガラスといわれております。
紀元前20世紀になるとガラス容器らしきものがエジプトと西アジアで出現するようになり当時は大変貴重なものでした。この段階こそ初めてのガラス工芸の幕開けとなります。

紀元前16世紀頃になると北メソポタミアで最古のガラス器製作技法の一つである「コア・ガラス」が作られるようになりました。製造方法は耐火粘土の外側に巻き付けて成型するため、大量生産をすることができず、とても高価な装飾品でした。このころの色合いはまだ不透明なガラスでした。

紀元前前後のローマ時代になると、現在でも世界中で受け継がれている「吹きガラス技法」が考案されました。ガラス工芸史上もっとも画期的な技術革命です。

これによって、球形や円筒状までさまざまなかたちや大きさのものがつくれるようになり 一気に普及されるようになったのです。ガラス窓もこのころに誕生しました。 このころはローマガラス(ローマングラス)といわれ、まだやや不透明なガラスでした。 透明なものほど好まれ、ガラスの持つ透過性が、美しさにおいても実用性においても定着したのです。

5世紀から14世紀にかけては円形模様が特徴の「ササングラス」や「エナメル彩色技法」が発案されたり、ステンドガラスが誕生したりするなど様々な加工技法が進歩しました。西洋のガラス工芸の礎です。
特にイタリアのベニスで生まれた「ベネチアンガラス」は一大ブームを巻き起こしました。
ヨーロッパのガラス市場を独占するほど繁栄し、西洋のガラス工芸に多大な影響を及ぼしたのです。ガラス工芸のルネッサンスの到来です。

17世紀に入ると、チェコ(ボヘミア地方)で無色透明な「ボヘミアンガラス」の製造が成功し、イギリスでは製造過程で酸化鉛を加えることにより発案された「クリスタルガラス」が生まれました。無色透明で美しい輝きを放つクリスタルガラスは現在でも表彰や徽章関連など様々な分野で活用されています。
19世紀ごろからはアール・ヌーヴォ(フランス語で新しい芸術)、その後のアール・デコの時代の到来となりガラス工芸の文化が発達し、日常品ではドイツやベルギーでは連続して溶解できる蓄熱室やタンク窯が発明されるなどし、20世紀からはアメリカで自動成形機械が発明されると今日に至る大量生産時代に入りました。

ちなみに日本では紀元前1世紀にシルクロードを渡り伝来したと言われています。弥生時代からは日本最古のガラス玉が発掘されています。 「瑠璃」「玻璃」という言葉はインドから中国を経て伝わったといわれます。
16世紀ごろから本格的なガラス製造が始まったとし、このころに広がった「ビードロ」はポルトガル語、「ギヤマン」はオランダ語、全てガラスを意味しています。
ちなみに日常的に使われている「ガラス」という言葉もオランダ語です。

漢字で「硝子」と書いてガラスと読むのは、原料に硝石を使っているからです。

ガラス用語集

【あ行】

・合わせガラス

2枚のガラスの間に樹脂製の膜を挟んで接着させたガラス。 身近なものとしては自動車のフロントガラスがあり、割れたガラス破片が飛散するのを抑える。

・アンティークガラス

吹きガラス製法で作るハンドメイドのガラス。職人が吹き竿で円筒形に吹いたガラス玉を切り開き、再度窯で熱して平面に伸ばして板ガラスにする。

・エコガラス

製造時にCO2削減、省エネ、地球環境に配慮した規格に適したガラス。

・絵付け

グリザイルやエナメルという絵の具を使い、ガラスの表面に自由に図案を描いた後、高温の炉で焼き付ける技法。

・エッチング

ガラス表面を腐食させて文様を彫る方法。彫りたくない部分にはパラフィン(保護膜)を塗布しておき図案を残す。腐食剤はアシッド(フッ酸)を使用する。

・エナメル

絵付けに使用する顔料。融点の低いガラスを使用して焼き付けるとガラス素地に融合して定着する。

・江戸切子

江戸末期に生産された江戸切子は透明なガラスに鑢や金棒と金剛砂によって切子細工をし、磨き行った手作業による手摺りカット製品。薩摩切子が厚い色ガラスを重ねた被せ(きせ)ガラスも用いていたこと、ホイールを用いた深いカットと大胆な形であることで大きな違いがある。

・エミール・ガレ

アール・ヌーヴォー期の代表的な芸術家。ガラス工場経営者の息子でもあり植物学者でもある。自然物をモチーフとした伸びやかな作風はこんにちも多くのガラス工芸愛好家たちを惹きつけてやまない。

・オパールガラス

製造過程で原料にフッ素やリンを混入することにより透明度を低めた不透明なガラス。白色はオパール、単色はオペークという。

【か行】

・被(き)せガラス

ガラス素地の上に他のガラス素地を被せたガラス。数種類の色の違うガラスを被せることにより、サンドブラストやグラインダーで様々な文様を表現できる。種類も多く愛用する工芸家も多い。

・キャスティング

鋳造のこと。 型の中に熔融したガラスを流しこみ、成形する方法。古代メソポタミアですでに行なわれていた古くからの製造法。

・グリザイユ

絵付けに使用する粉上の顔料。溶剤と一緒に練って使用する。

・クリスタルガラス

透明度の高い水晶のようなガラスのこと。一般的には鉛クリスタルを指す。透明度や光の屈折率が高く重量感があり徽章関連や高級品によく使用される。

・グルーチップ

ガラス面に鳥の羽や霜のような文様が表面にあるガラス。 ガラスに塗布したニカワ (glue) が乾燥して収縮するとこのような文様になる。

・コールドグラス

熱処理による再成型ではなく、成形済みのガラスを用いて制作する技法の総称。 ステンドグラス、サンドブラスト、 エングレイヴィングなどがこれに当たります。

【さ行】

・サンドブラスト

圧縮空気でメディア(金剛砂)をガラスに吹きつけ、表面に彫刻を施す技法。 ガラス面にマスキングシートを貼つけることにより、つや消し状の文様を彫ることができます。

・シェード/ランプシェード

ランプの笠の部分。

・徐冷

熱いガラスを徐々にさますこと。なましともいう。 熱で成形したガラス器などを徐冷窯に入れ、時間をかけて少しずつ、均一に冷ましていく工程のことです。 熱いガラスを急激に冷やすと割れやすくなるため、この徐冷窯にて徐々に冷やす。

・ステンドグラス

複数枚の色ガラスをケイムやコパーテープなどを用いて接合し、 パネルやランプなどの作品に組みあげる技法をいう。 平面ガラスをカットしたものをそのまま使用するほか、 フュージングや絵付けなどを施したピースと組み合わせることもある。

・スランピング

ガラスを型に載せて高温の焼成炉で軟らかくし、 ガラス自体の重みで沈ませて、湾曲をつけたり特定の形状に作り変えたりする成形技法。

・ソーダガラス/ソーダ石灰ガラス

珪酸、酸化ナトリウム、酸化カルシウムを主成分とするガラス。 安価で丈夫なため、身の回りで最も多く使われているガラス。 クリスタルや耐熱ガラス以外の食器は殆どがソーダガラスになる。

【た行】

・ティファニー

ルイス・コンフォト・ティファニー (Louis Comfort Tiffany, 1848-1933)
近代アメリカの代表的なグラス芸術家とその工房、および作品。

・トンボ玉

ひも通しの穴があるガラス玉。 大きさ、形状、デザインともに多種多様です。 古代メソポタミアやエジプトですでに行なわれており、 現在でもランプワークの主な技法として、広く親しまれている。

【は行】

・パート・ド・ヴェール

古代に行なわれた技法の一つで粒状または粉状のガラスを型に入れ高温炉で焼成して成型する技法。アール・ヌーヴォーの時代に再度、盛んになり現在にも受け継がれている。

・バーナーワーク

バーナーを使いガラスを溶かしながら成形していく工法。欧米ではランプ・ワークとも言う。
昔は石油ランプの炎で作っていたが、現在はガス・バーナーが主流。トンボ玉やアクセサリーなどの装飾品から、ガラス器、理化学用機器まで範囲が広い技法として有名。

・びいどろ

江戸期に日本で作られたガラス器のことをいう。びいどろとは、ポルトガル語で、日本では『ガラス』の意味。

・ヒヤリス・グラス

19世紀にボヘミアで発明された技法。黒や赤色ガラスを被せて磁器に似せたガラス。最近では、更に金彩で装飾されることもある。

・プレス成形

ガラス器の仕上がりの模様や形を内側に彫り込んだ凸凹2つの型を用意し、流し込んだガラスを凹凸で挟み込み(プレス)作る成形方法。

・フンペン・グラス

16世紀頃にヨーロッパの方で生成された円筒状の大きな杯のことを指す。

・ホットグラス

バーナーや炉などの熱を利用し、ガラス素材を軟らかくしてから成形または加飾する技法の総称。吹きガラス、フュージング、バーナーワークなどがこれにあたる。

【ま行】

・マイゲライン

森林ガラスの一種と同じ緑色をしていて、底肉が厚くオプティカル装飾が施された小さな半球形のカップを言う。ドイツで15世紀頃に造られていた。

・マッフル窯

絵付けをする際に使用する、炎が直接作品に当たらないように工夫された焼成窯。

・マーブルグラス

大理石、玉髄などに似せて作られたガラスのこと。

・ミレフィオリ・ガラス

モザイクガラスの一種。文様が小さな花を散らしたように見えることからミレフィオリ(千の花)・グラスと呼ばれているそう。

・モザイク・ガラス

古代の成形法の一つで、モザイクのようなガラス器を作る技法。ガラス片を型の中に並べて焼成溶着させる。もともと古代メソポタミアの技法だが、吹きガラスの発明とともに姿を消していった。

・モールド

型、鋳型、台型。

・モトル

まだら模様、またはぶち模様のあるガラス。 別名リングモトルという。

・溶着

フュージングなど熱でガラスどうしが溶け合い一つのかたまりになることをいう。

【ら行】

・ラスター彩

金属顔料をガラスの表面に塗布して焼成し、虹色や玉虫色に発光させる加飾法の一つ。

・レースガラス

レースのような繊細な文様をガラスに埋め込んで器を成形する技法。べネツィア・グラスに好んで用いられた。いくつかのタイプがあり、色ガラス棒を縞模様に埋め込む方法(ヴェトロ・ア・フィリ)や網目状に埋め込む方法(ヴェトロ・ア・レティチェッロ)、レース棒を組み合わせたより繊細なレース文様の方法(ヴェトロ・ア・レトルティ)などがある。

・レーマー杯

器の部分が球形か卵形をしており、脚部は円筒形、台は裾広がりになっているドイツの伝統的な杯。小突起(プラント)が溶着されているのが特徴。

・ラリック

ルネ・ラリック (Rene Lalique, 1860-1945)。 フランス出身。アール・デコ期のグラスアーティスト。 動植物や女性像をモチーフにした、型吹き成形やプレス成形での商品が特徴的。

・リップル

表面に波 (リップル ripple) のような、細かい凹凸がついたガラスのことをいう。

・ルーター

ビットと呼ばれる部分をモーター回転させてガラスを加工をする機器。 カットガラスの切り口を滑らかにし、ガラス自体に穴を開けたり、表面に彫刻を施したりと、様々な用途に使用される。

・ロンデル

宙吹きで膨らませた球の口を広げ、勢いよく回転させて円盤状にしたガラス。 非常に古い工法ではあるが現代でもガラス工芸の作品に多く取り入れられている。

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